空き家の増加は他人事ではありません。
2020.07.10 00:00
IP支店 S・K
こんにちは!インターパーク支店設計部のS・Kです。
2020年もあっという間に折り返し地点を迎えました。
コロナの流行がなければ、今頃はオリンピックムードで盛り上がっていたのでしょうか。
いち早くなにげない日常に戻り、来年はオリンピックが開催できることを願っています。
さて、今回は近年問題が深刻化されている空き家問題についてのお話です。
総務省の平成30年住宅・土地統計調査によると、日本の空き家率(全ての戸に対する空き家の割合)は13.6%となっています。戸数にすれば848万9千戸です。
引用:国土交通省 空き家等の現状について
グラフは空き家の種類とその割合です。内容については次にまとめます。
1)賃貸用住宅(52.4%) …アパートやマンションなどで空室となっている住宅。
2)売却用住宅(3.8%) …買い手が見つかるまで人が住んでいない売却用の住宅。
3)二次的住宅(5.0%) …別荘や寝泊まり用などの常に人が住むようではない住宅。
4)その他の住宅(38.8%) …その他の理由で空き家となっている住宅。
この中でも4のその他の住宅が大きな問題となっています。
なぜなら他の空き家に比べて管理する動機が弱いので、今後増える可能性があるからです。
空き家が増える原因はいくつかあります。
まず新築住宅の供給過多です。
日本では家を建てようと思ったら、何もない土地に新しく家を建てる新築という考え方が一般的です。皆さまの周りも新築住宅に住んでいる方は多いでしょう。
これは戦後の日本が住宅の新築を推奨していたことが、現在の考え方として残っています。
また、日本は地震が多く建物自体の寿命も短いことが挙げられます。
より長く住むためには新築にしたいと考えるのはもっともです。
しかし海外に目を向けてみると、アメリカでは中古住宅の割合が8割と高いです。
これにはアメリカの土地利用に関する制限がかかわっています。
アメリカでは新築を建てようとすると、どこに、どんな規模の、隣家との間隔はどのくらい…など細かい決まり事を守らなくてはなりません。
つまり、「どんな家を建てよう」より「私に合った家はどこにあるか」と考えるのです。
まさに日本とは真逆の考え方ですね。
他にも固定資産税の問題があります。
家の所有者は家を所有しているだけで、毎年固定資産税を支払う義務があります。
しかし、固定資産税の特例において建物が建っていると税金が1/6に減額されるという制度があります。
つまり空き家を解体して土地だけを所有する状態にしてしまうと、家を建てている場合の6倍もの税金を納めることになります。解体費用も合わせると所有者の負担は相当のものです。
日本においては住まないとしても家が建っていた方がお金がかからないことになります。
これは空き家が増えている大きな原因と言えるでしょう。
他にも高齢者が他の土地に移り住むケースがあります。
1947~1949年生まれの団塊の世代が高齢化していることで、高齢者が子の家に転居するケースが増えています。高齢者がもともと住んでいた家は空き家となり放置されます。
それでは空き家が増えるとどんな問題があるのでしょうか。
そもそも空き家が増えるということは、その地域に住む人が減少しているということです。
そうすると街自体の活気は衰える上に、行政はインフラの整備を維持することも困難です。
また整備されなくなった住宅は景観が衰えたり、不法侵入や悪臭を放つ原因にもなります。
放火されたりするケースも少なくありません。
人口が減り、空き家が増え、それでも新築需要は減らないとなると、同じ地域内でも賑やかな場所とそうでない場所ができ、後者では家自体の資産価値も下落してしまいます。
空き家の中でも問題とされるのは長期間管理がされていないものです。
人が住まない家は外観・内観、構造躯体ともに傷むスピードは速くなります。
適度な間隔で家をメンテナンスすることは所有者の努力義務と言えます。
近年は”空き家管理サービス¹”なども充実してきており、専門家とのお気軽な相談も可能です。
また、管理しきれない空き家を売却してしまうのも一つの方法です。
家の買い手が見つからないときは”空き家バンク²”というサービスに空き家を提供することもできます。この時に売却のお金は得られませんが、先述した「空き家を持っているデメリット」は放棄することができます。
他にも都市部では空き家を民泊にリノベーションして経済効果を生み出す動きも増えてきています。特に観光地では外国人や若者が利用する宿泊施設の需要が増えています。
空き家問題は世代が移るごとに誰もが直面する問題の一つです。
両親が高齢化・他界した際に残った家をどうするか決めておくことも居住者にとっては大切なことといえるでしょう。
それでは来月の更新もお楽しみに!
※1 NPO法人”空家・空地管理センター”による毎月1回外部から建物を目視点検し、報告を行うもの。月額100円で受けられるサービス。
※2 空き家の所有者と空き家の利用希望者をマッチングするシステム。自治体が運営しているケースが多い。
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