基準法に適合できない場合は…?
2023.11.11 00:00
佐野支店 S・K
今回は基準法の特例についてのお話です。
設計者は基準法を遵守することが使命です。
ただし代替案が行政に認可されれば違う方法を取ることも可能です。
前回のブログで22条区域の話が出ましたので…
22条区域を例にいたします。
そもそも22条区域とは…
防火地域・準防火地域以外の地域でも火災によって町全体に被害がでる可能性がある地域が該当します。
一つの建物で火事が起きても他の建物には燃え広がらないように屋根と外壁を燃えにくい材料に限定しているのです。
ちなみに栃木県では、都市計画区域内の地域はすべてこの22条区域に該当していますので
ほとんどの方は22条区域内にお住まいということになります。(日本人の94%は都市計画区域内に住んでいます。)
ここからが本題。
実例を挙げて説明いたします。
皆様は東京ディズニーシーでかやぶき屋根の建物を見かけたことはあるでしょうか。
(ジャングルを探検するアトラクションのようです)
浦安市のこの地域はばっちり22条区域に指定されています。
22条区域(延焼を抑制する区域)にかやぶき屋根(燃えやすい屋根)…?
これが特例によって法基準に適合させている例になります。
実はこの施設に限ってきびし~い条件をクリアして国の許可を得ることで区域の指定を外しています。
(周囲に燃え広がらないよう建物を一定距離離す、適切な消火設備を設置する等)
上の都市計画情報の防火・準防火地域等の欄で『建築基準法第22条区域(一部)』と表記されており、この(一部)"以外"の場所が特例として外された区域を示しています。
あくまで建設に最もな理由がなければ認可されない点には注意が必要です。
例えば歴史的な建築物の再現や移設など国にとって利益があると見込まれる事業などが該当します。
万が一にも一個人が住宅を建てるために22条区域の指定を外すことは不可能でしょう。
(住宅を取り扱う工務店のブログで紹介することではないですね)
ディズニーシーは世界観の再現のために22条区域の指定を外した稀有な例と言えます。
申請者と国の協議にはとてつもない苦労があったことがひしひしと伝わってきます。
(一度園内の設計図を閲覧してみたいものです)
特例を使えば、基準法の原則が変更できるケースもあるというお話でした。
また、国宝・重要文化財の建物はそもそも基準法が適用されません。
観光地などで建物を見るときは、建物(あるいは人)を守るためにどんな対策をしているかに目を向けると新たな発見ができるかもしれませんね。
建築豆知識
檜皮葺をご存知でしょうか。
2023.10.20 11:00
宇都宮西展示場 M
皆さんこんにちは。
宇都宮西支店のMです。
最近は登山で少し遠くまで足を伸ばす中、ある場所で現代の建物であまり見ない屋根を見ることができました。
こちらは檜皮葺(ひわだぶき)と言われる屋根葺手法の一つで、檜の樹脂を用いて施工されます。
古くからの手法ではありますが、現代ではこのような屋根葺は見られなくなってきました。
その背景には、建築基準法が関係しており、その中でも第22条が大きく関わっています。
内容は以下の通りになります。
特定行政庁が、防火地域及び準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根の構造は、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために、屋根に必要とされる性能に関して、建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、茶室、あずまやその他これらに類する建築物または延べ面積が十平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物の屋根の延焼のおそれのある部分以外の部分については、この限りでない。
以上より、防火地域や準防火地域は元より、建築基準法22条地域においても、檜の樹脂を使用している檜皮葺屋根は施工できないという事になります。
逆に言うと、上記の地域以外などでは使用できる事になりますので、お近くの展示場スタッフまでご相談ください。
最後に、萱葺の屋根を添えて今回のブログは終わりです。
来月のブログもお楽しみに!
建築豆知識
地震に強い構造とは?
2023.09.18 14:25
インターパーク支店 S
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今年はもう少し先かな~。 那須姥ケ平の紅葉
こんにちは インターパーク支店 監理設計部のSです。
今回は、すまいを建築するに当たって、必ず考慮しなければならない耐震の話です。
最近でも、この9月1日で100年目を迎えた「関東大震災」(大正12年)の被害のことが、某TV局で放送されていました。
私たちが生まれる前の出来事ですが、今でも震災といえば必ず思い起こされる大惨事のひとつです。
その後も
昭和43(1968)年5月16日 十勝沖地震
昭和58(1983)年5月26日 日本海中部地震
平成7(1995)年1月17日 阪神・淡路大震災
平成16(2004)年10月23日 新潟県中越地震
平成19年(2007)7月16日 新潟県中越沖地震
平成23(2011)年3月11日 東日本大震災
平成28(2016)年4月14日 熊本地震
以上のように最近でも記憶に残る大震災等がいくつもありました。その度話題に上がるのが、建築の耐震対策の話です。
では、地震に対し建物を守るためにはどのような方法があるのでしょう。
建物の耐震性を確保するための構造には一般に耐震構造・免震構造・制震構造等があります。
1.耐震構造
建物の構造を成す柱や梁・壁等を堅固にし、地震の揺れに耐えるよう設計した構造。
建設コストが比較的安く、工期が短い、また自由に設計しやすい利点があります。
半面、家具の転倒などによる事故が起こりやすく、繰り返しの揺れに弱いという弱点もあります。
2.制震構造
建物の構造に特殊な装置を設置し、地震の揺れを吸収させて倒壊を防ぐ構造。
建設コストが安く抑えることができ、揺れに強くメンテナンスが容易な点があげられます。 ただ、ダンパーの種類によっては、装置の定期的な点検が必要になります。
装置の設置場所や数が効果に影響し、地盤の影響を受けやすい 弱点があります。
3.免震構造
基礎と建物との間に揺れを緩衝させる装置を設置し、地震のエネルギーが直接建物に伝わらないようにした構造。
地震による揺れが小さく、建物内部の損傷を防止できる利点がありますが、横揺れの地震以外には効果を発揮しにくく、コストが高くつくのが一般的です。
以前は耐震構造を主に設計等も考慮されてきましたが、大規模建築に採用されていた免震・制震装置の開発が進み、徐々に一般住宅にも採用されてきています。
最近では国交省より、木造建築物における省エネ化等による建築物の重量化(ZEH水準等の建築物)に対応するための必要な壁量等の基準の概要が公表され、令和7年4月から構造等の見なおしが成される事になり、益々建築構造等の検討が重要に成ってきました。
当社でも、以前から地震対策としていくつかの独自の施工対策を取ってきています。
ICP工法(貫イゲタ工法)・外部開口部上に設置する現代差鴨居式工法・全ネジ式通しボルト等・・・。
最近ではさらに制震構造に目を向け、住友ゴム工業株式会社様提供のミライエΣ(制震装置)を取り入れた地震対策も行っています。
各展示場を訪れた際には、是非一度構造展示ブースにも足を運んで、実際にご確認をして見てください。
今回はここまで、次回の担当ブログでまたお会いしましょう。
建築豆知識